TOEFL大学入試への導入に反対意見を少しばかり。

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少し下火になってしまっているが、大学入試にTOEFLを導入する答申案が示されている。

2013年時点では、2017年度入試にてセンター試験をTOEFLに変えることが進言されたが、さまざまな識者が反対した。

2014年度の答申案では、2021年度の新共通入試にてTOEFLを導入するように提案されているが、個人的には現状でのTOEFL導入を強く反対している。今回はその理由を少しばかり述べたいと思う。

 

 

TOEFL大学入試に反対の理由

まず、もっともらしいTOEFL導入賛成派の意見を見てみよう。

文部科学省は年内にもまとまる答申を受け、2021年度入試からの新共通テスト導入に向けて制度設計を進める。

現行の大学入試の英語は「読む・聞く」の2技能に偏っており、日本人が英語を習得できない要因の一つとする指摘は多い。中教審は今回の答申案で学力評価テストの英語について「『書く』『話す』も含めた英語力をバランスよく評価する」という考えを初めて明示。評価方法として記述式問題や面接などを例示し、外部試験の活用も検討課題に含めた。

文科省は近く、TOEFLや実用英語技能検定(英検)など各試験の主催団体や高校・大学関係者などによる協議会を設置し、各試験の出題傾向や評価基準などを検証する。検証結果を踏まえ、国
が独自に学力評価テストの英語の問題を作成するか、外部試験に委ねるかを判断する。

 

【引用:日本経済新聞

 

つまり、現行の英語の入試では、本当の英語力である「書く」「話す」の技能が計れないので、TOEFLの試験を導入しよう!ということだ。

 

しかし、これは現状の英語教育や学習指導要綱にかなり即していない絵空事のように思えてならない。

この点に関して、早稲田大学国際教養学部の池田清彦教授が以下のように苦言を呈している。

朝日新聞の論争を読むと、推進派の頭目である遠藤議員はTOEFLは受けたことがなく、受けて10点ぐらいだろうと公言しておられるが、そういう人がTOEFL導入を推進しようとするパトスはどこからくるのだろうか。不思議なことに、英語を話せる教育を学校現場に導入しようという議論に賛成の人は、総じて英語が苦手で、反対の人は総じて英語が上手い。

遠藤議員は、中学高校で6年間英語を学んだのに英語が使えないのは、学校の英語教育が悪いせいだと言いたいようだが、論争相手の英語教育学が専門の江利川教授の言うように、学校教育だけで英語が話せるようになると思うのは幻想である。「うちの子が勉強ができないのは先生の教え方が悪いせいだ」はモンスターペアレントの口ぐせだが、勉強ができないのはアンタの子どもがアホなせいに決まっている。

教育のやり方を変えれば自動的に英語ができるようになるということはあり得ない。学校など行かなくともその気になれば独学で英語ぐらい喋れるようになるさ。それに英語など喋れなくとも衆議院議員が務まることは遠藤議員自らが証明しているわけだから、日本で暮らすのに英語は不要ではないですか。

【引用:週刊朝日・Exciteニュース

と、上記のように的確に英語を話せない人たちがTOEFLを導入すれば、英語が話せるようになるんじゃないか!という気持ちが先行した結果に感じてしまえる。

もし、本当に日本人が英語が話せるようになってほしい!という強い気持ちから制度改革を計るのであれば、ケツではなく入口や中身を変えてからでないと事実上の破たんをきたしてしまうだろう。

ケツだけはるかに難しい試験を導入し、中身が伴わないのは

小学生のサッカーチームにセリアAの入団試験を半年後に受ける

と言っているようなものだ。

 

 

具体的に私が反対な理由をいくつか紹介したい。

 

1、難易度・単語数の問題

文部科学省が定めている学習指導要綱では、中学高校合わせて3,000語の英単語数が設定されている。

一方、TOEFLの試験で必要な英単語数は約6,100語と言われている。

大学入試では難関大になれば、5,000~6,000語、TOEFLでも80~90点の高得点を目指すのであれば、10,000~12,000語が目安と言われているので、ザックリ倍の英単語数を覚えなければならないとういことだろう。

(大学入試対策の英単語とTOEFL対策の英単語の違いを見れば一目瞭然だろう。)

 

単語1つとっても。現役の高校生が倍以上の勉強をしなければならない。

それに加えて、「ライティング」「スピーキング」のスキルも要求されるため、現行の英語授業の量だけでは圧倒的に足らないだろう。

そもそもTOEFLは、「英語圏の留学生が留学することができるか否か」を計るための試験として定めらているのでアカデミックな内容が非常に多く、全体的に難易度が上がってしまう。

 

私自身も大学に入り、留学のためにTOEFLの勉強を丸2年間費やしたが、生半可なものではなかった。

英語だけの勉強で良いのなら話は別だが、現役の大学受験生は英語以外の教科も多岐に渡り学習しなければならない。学校の授業も受けつつ、他教科を受験しつつ、TOEFLの勉強をするのは、至難の業だろう。

 

2、指導する教員の問題

TOEFLを指導することが可能な教師は現状、ごくわずかだと思う。

今、全国の教員に一斉にTOEFLの試験を受けさせたら、120点満点で100点を超えることができる先生は一体どれほどいるのだろうか。

 

ハッキリ言ってTOEFLは難しい。

私自身は大学で英語を専攻し、2年間みっちり英語を学習し、1年間ワシントン大学に留学し、それではじめて100点以上を取ることができた。

しかし、多くの英語教員は長期間の留学を経験しているわけではないし、長らく受験英語の指導だけをしてきた教員はTOEFLレベルの英語力があるようには思えない。

 

現在、高校の授業は原則英語での指導と位置付けられているが、実際に英語で指導ができている学校はほとんどない。

なぜなら、ゴールが大学受験の英語になってしまっているので、長文や文法問題を英会話で指導する理由が無いからだ。

つまり、「こうやって指導しましょうね」という指針を出されていても、実行できていないわけなのだ。だから「TOEFLの指導をしよう」としても、教員が対応できるかが疑問である。

そもそも学生達のレベルがTOEFLレベルの英語力に追いつかないので、教員も必然的にレベルを下げるしかないだろう。

 

 

 

3、費用の問題

TOEFLの試験費用は高い。

受験料は米ドルで230ドル。2015年10月18日現在で、為替レートが1ドル=約120円なので、1回の受験料が1人27,600円になる。センター試験の18,000円よりも高い。

独立行政法人大学入試センターのデータによると、平成26年度の志願者数は56万人なので、合計約154億にもなる。

これはたった1回だけの試験なので、これが複数回になると物凄い金額になるだろう。

 

これだけの費用を家庭に強いるのか、国が一部を負担するのかも気になるところだ。

そもそもNPOとは言え、特定の期間にこれだけのお金を事実上献上するのも公平性としてどうかと思う。

 

 

以上が、私がTOEFLを大学入試に導入することに反対な理由だ。

 

反対してばかりでも発展性が無い。条件付きで賛成したい部分もあるので、個人の意見を述べさせてくれ。

 

 

TOEFL大学入試に導入を可能にするには?

 

1、徹底的な早期教育・授業数増加

スピーキングが課されているTOEFLを導入するのであれば、英語の教育を徹底的に行うべきだと思う。

小学校1年生から、週5回英語を導入し徹底的に「会話」の授業をさせるべきだ。

まだ羞恥心が薄いうちに「英語での会話」が当たり前の状態で学校教育を改革していくべきなのだ。

高学年や中学生・高校生からいきなり「会話」を学習させようにも、プライドの高い日本人は人前で英語の話せない自分を晒したくないだろう。

だから小学生の低学年から徹底的にやる。

 

そして、向こう12年間、毎日英語の授業を必修化する。

英検や各種試験を受験させ、合格できない者は合格するまで英語のクラスに関しては進級できないようにするべきだ。

 

そもそも「言語の学習」はそんな生半可なものでない。

圧倒的な時間を割かなければ、習得なんてできるようにはならないのだから、学校教育でそれをやるなら不退転の覚悟で臨むしかない。

 

 

2、みなし満点で十分ではないか?

現在、一部の大学にてTOEFLのスコアによっては英語の入試を免除したり、センター試験にて満点扱いとなる。


国際教養大学国際教養学部 一般入試 → TOEFLibt71点以上はセンター試験満点扱い

立教大学 全学部 → 2016年入試より一定数は、TOEFLで点数を満たせば英語試験を免除

 

といったように、TOEFLのスコアを入試代わりに使っている大学が増えている。

 

このように国が大学側に勧告し、TOEFLを試験代わりにする動きを進めていくだけで十分なのではないかと思う。

TOEFLの目的は、「留学生が英語圏の大学でやっていけるだけの十分な英語力を有しているか」といった点であるし、資格試験なので、原則受けたい人が受けるべきであり強制するものではないと思われる。

 

大学側がTOEFLの試験にて、英語の試験を免除する動きが広がれば、自然とTOEFLを選択する動きが出てくるかもしれない。

 

 

TOEFL大学入試の今後の流れ

おそらく流れとしては、TOEFLのスコアを入試の代わりにする流れになろう。

TOEFLは難し過ぎるので、民間企業が考案したTEAPなる試験が開発され、試験的に導入する流れも起きている。

 

全導入まではいかないまでも、一部導入をしながら、英語教育を見直していく。

改革までには数十年がかかるのではないだろうか。

 

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