個別指導塾の自然淘汰が始まっている。
教育業界は聖職の名を良いことに学生を酷使する傾向が以前からあった。しかし、最近のネット社会の発達で、不当な扱いを告発する学生が増え、個別指導塾ユニオンが結成されるまでになった。
今回はなぜ、個別指導塾でブラックバイトが横行するのか?そのワケについて紹介したいと思う。
個別指導塾でブラックバイトが横行するワケ
①授業の報告書提出の義務がある
個別指導塾では、授業内容を教室長に提出する「報告書」の提出義務を課しているところが多い。
その日の授業で学習させた内容、子供の理解度、子供の様子、などなどA4の紙に半ページから1枚程度を1人の生徒に対して書かせるのだ。
もちろんコマ給制の個別指導塾では、講師は授業後に報告書を記入するため、時間外労働が増える。
例えば、90分2コマを担当する講師がいたとしよう。
1対2の個別指導塾であれば、2コマ担当で合計4人分の指導報告書を記入することになる。
1対3の個別指導塾であれば、2コマ担当で合計6人分の指導報告書を記入することになる。
1人あたり、5分かかるとしても20分~30分の残業になるのだ。
中には、早く帰りたいために生徒に問題を解かせている授業中に指導報告書を記入する個別指導塾もあるそうだ。
②そもそもコマ給だから
個別指導塾は時給制ではなく、「コマ給」制を取り入れている塾が多い。
コマ給制とは1回の授業に対して給料が支払われる仕組みだ。90分1600円や、90分1800円といった具合なのだ。
しかし、授業準備のために20分ほど早く始業が開始できる状態を課している塾や、授業後の清掃、質問受付などを含めると実質2時間程度かかってしまう場合も少なくない。
すると2時間で1600円ということになり、時給に換算すると800円になってしまうのだ。地域によっては最低賃金を割り込んでしまう。
個別指導塾ユニオンでは、このコマ給こそがブラックバイトの装置として働いているとして是正を求めている。
報告書や季節講習会の提案表の作成に1通、50~100円などの料金設定をしている個別指導塾もあるが、これも本来は違法である。
1通作成に10分かかるとしたら、時給換算すると300円~600円になってしまうからだ、
これが外注先への業務委託契約であれば、なんら問題ないが時間を切り売りするアルバイトの形態としてでは大問題なのである。
③儲かっていないフランチャイズオーナーが多いから
実は個別指導塾は脱サラからフランチャイズオーナーになっている人が多い。
開業費400万~1000万円程度で独立することができるのでセカンドライフとして個別指導塾のオーナーを選択する人は少なくない。
しかも、ここまで個別指導塾が短期間で教室数を増やしてきた理由はフランチャイザーの熱心な営業努力によるもので、フランチャイジーになれば、昼まで寝れて年収1000万円!という夢のような生活が待っていると信じ込まされるからだ。
しかし、現実は甘くない。
年収1000万円を夢見て、個別指導塾のオーナーになったはいいものの教育業界の経験がないために生徒を集めれないオーナーが多数なのだ。
すると、アルバイト講師に対してすべての残業代を支払う余裕なんか無くなるわけだ。
ちゃんと時間通り給料を支払えば会社が潰れるということなのだ。実際のところ、フランチャイズの加盟料だけでなく、毎月のロイヤリティや本部指定の広告費などがかさんで利益が出ないオーナーも多いのだ。
④質問に答えられるオーナーが少ないから
先にも挙げた通り、脱サラして個別指導塾のオーナーになる人は多い。
つまり、いままで20年や30年間別の仕事をしてきたわけだ。お父さんお母さん世代であれば、わかると思うが、小中学生の勉強をフルで教えることはなかなか難しい。
国公立大学出身で、勉強が大好き!という方であれば、話は別かもしれないが大抵の場合は勉強なんて忘れてしまっている。
だからこそ、授業後に生徒から質問を受けても答えられないオーナーが多いのだ。
するとどうなるか。
「ちょっと教えてあげてよ・・・」といった具合でアルバイト講師が教えることになってしまうのだ。もちろんタイムカードを切った後に。
こうしてサービス残業が増える仕組みができあがるのだ。
個別指導塾の場合は、オーナー1人以外はすべてアルバイトといった形式が多いので、
オーナーが質問に答えられない場合は、アルバイトが答えるしか方法が無いのだ。
⑤子供相手の仕事だから
マインド的な側面もある。
先にも挙げたように、オーナーが質問に答えられないとアルバイトが教えてあげることになる。
しかし、純粋無垢な子供からの質問を「今は時間外だから、教室長がお給料出してくれるなら教えてあげるよ。」なんて図太く言える大学生は少ないだろう。
目の前の子どもに対して、奉仕の精神は少なからずとも出てきてしまうのだ。そして、「子供相手にしている仕事でお金のことをとやかく言うのは・・・」といった気持ちになってしまう講師も少なくないのだ。
昔から、教育業は聖職の名のもとにボランティア精神と結びつく部分があった。
お金があった十分にお給料を支払えるのなら話は別だが、フランチャイズオーナーは儲かっていない。
「君が生徒の質問をサービスで教えたんでしょ?」
といった空気を出して残業代については言及しないわけなのだ。
⑥担任制かつ受験があるから
辞めたくも辞めさせてもらえないケースも多いようだ。
最近のブラックバイトの定義では、「辞めたいのに辞めさせてもらえない」といった事案が続いている。
個別指導塾の場合は担任制を採用しているところが多いので、1人の先生が辞めると数名の生徒に影響が出る。
例えば、ある講師が月曜日と木曜日に2コマずつを担当していれば、1対2の個別指導塾では合計8名の生徒が担当変更になる。
すると、オーナーとしては8名の保護者様にとやかく言われてしまう可能性がある。
「前の先生が良かったのに」
「先生が変わるから塾辞めます」
子供としても慣れ親しんだ先生が変わるのであれば、成績も上がっていないし塾を辞めようということになりやすい。
オーナーとしては、「君、受験生ほったらかして辞めちゃうの?」と圧力をかけるわけだ。
「そんな責任感が無いようじゃ、社会に出てやっていけないよ?」と実際に言われた大学生を知っている。実際は辞められるとオーナーが困るのに、大学生のせいにして辞めさせないように仕向けるわけだ。
まとめ
以上が主な個別指導塾にてブラックバイトが横行するワケだ。
大学生の感情を揺さぶり、無理を強いるのは独立事業主として悪でしかない。
個別指導塾ユニオンが活躍し、業界が淘汰されることを祈っている。